言ってるだけ

登場人物

A♂♀:「死にたい」が口癖
B♂♀:ツッコミ役の常識人

あらすじ

いつも「死にたい」って言ってる人とそれにツッコミを入れていく人の掛け合い
ひたすら会話してるだけです

やる前の注意

A・Bとも男の前提で台本が書いてありますが、口調変えて性別変更もokです!
若干下ネタあり

台本

A「死にたい」
B「お前いつもそれだな。聞き飽きたわ」
A「じゃあ、隕石落ちてこないかな」
B「それも聞いた。というか、そんなこと皆思ってるわ、言わないだけで」
A「そうかー…」
B「みんな生きるのは辛いんだよ?辛いけど生きてるんだよ?」
A「うるさいなあ、正論を投げつけてこないで」
B「だからお前も頑張って生きろ」
A「僕、『頑張る』って言葉、大っ嫌い」
B「知るか」

A「ていうかさあ、おかしくない?」
B「何が?」
A「命を作るのは簡単なのに、命を壊すのはすっごい難しいじゃん」
B「はあ…」
A「だって、考えてみて?子供なんて、中出しセックスすれば簡単にできちゃうんだよ?でも、自殺ってすごい難しいじゃん。ショットガンを顔にぶっぱなしても生き残ることもあるらしくて、僕はもうどうしたらいいかわからないよ」
B「だから生きろってことだよ」
A「やだ」
B「やだじゃねえよ、皆やってるんだよ」
A「そういう『皆やってるから自分もやれ』みたいな考え方、好きじゃない」
B「社会不適合者め…」
A「そうだよ!僕は社会の落ちこぼれなんだ!」
B「というか、そもそも子供を産むのが簡単とか、死ぬのが大変とかいう考えやめた方がいいぞ」
A「なんで?」
B「あのなあ、世の中には不妊治療で苦しむ女性がたくさんいるし、アフリカじゃあ内戦やら飢餓やらで子どもたちがバタバタ亡くなっているんだぞ?もうちょっと考えてから発言しろよ」
A「さすがに君の前以外ではこんなこと言わないさ。それに、確かに『世の中』はそうかもしれないけど、僕の住む世界ではそうじゃない。僕が生きているのはアフリカじゃなくて、現代日本。しかも、結婚の予定もない、寂しい独り身。だから、僕にとっては生きるのは簡単で死ぬのが大変なの。あと、死にたい」
B「最低な野郎だな…。お前もう本当に死んだ方がいい気がしてきた」
A「でしょ?だから、僕は死にたい」
B「わかったわかった。まあ、死ぬなら俺の知らないところでやってくれよ。取り調べとか来たら面倒だからな」
A「冷たくない?僕たち友達じゃないの?」
B「…知り合い?」
A「うわあ。傷ついたわ、死にたい」
B「耳にタコどころかクラーケンができたわ」
A「耳にできるタコって魚介のタコじゃないからね?」
B「おお、流石にそれくらいはわかるんだな」
A「いちいち馬鹿にしてくるのやめてもらっていい?!そんなに僕のこと嫌い?」
B「うん、嫌い!」
A「わあ、いい笑顔!死にたい!」
B「あのさあ、いい加減『死にたい』と『隕石落ちてこないかなー』以外の言い回しを考えてくれよ」
A「は?なんで?」
B「俺が飽きたから」
A「清々しいまでに自分本位だね!まあ、どうせ暇だし考えるかあ」
B「是非そうしてくれ」

A「うーん、何がいいかなあ…。『哲学的ゾンビになりたい』ってどう?」
B「いいけど、意味が分かる人が少ないと思うぞ」
A「そっかあ…もっとこう、汎用的な表現がいいよね。『消えたい』は?」
B「メンヘラかよ」
A「あながち間違ってないけどね」
B「そうかそうか」
A「うん。そうだなあ、『朽ち果てたい』」
B「いいけど、なんだか退廃的な雰囲気が出すぎてる気がする」
A「ケチつけてないで、君も考えてよ!」
B「だって、俺は別に『死にたい』なんて一時間おきに言わねえもん」
A「う…たしかに。でも、改めて考えると『死にたい』ってすごく秀逸な表現だね」
B「というと?」
A「だって、今の僕の気持ちをたった四文字で簡潔に表してるんだよ?こう、たった17文字で思いの丈を伝える日本の文化が受け継がれている感じがする」
B「俺は、『死にたい』なんてクソみたいな言葉から日本の文化にまで言及できるお前が怖いよ」
A「もっと褒めていいんだよ?」
B「断固拒否する」
A「死にたい」
B「もう何も言うまい…」
A「ほら、やっぱり『死にたい』が一番いいよ。すごくしっくりくる」
B「そりゃあ来る日も来る日も言ってりゃあ、口にも馴染むだろうよ」
A「やっぱ慣れ親しんだものが一番だね」
B「ソウダネー」
A「もはや聞いてないね?ああ、死にたい」
B「うんうん」
A「ほんとに死ぬよ?」
B「好きにしたらいいさ、俺の人生じゃないし」
A「まあ死なないけどさ。だって、未遂に終わったら嫌だもん」
B「そうそう。だから生きてるのが一番なんだぜ?いい加減諦めて、『死にたい』って言うのやめろよ。『生きたい』って毎日言い続ければ、もしかしたら『死にたい』って思わなくなるかもよ?」
A「なるほど…」
B「しかも、お前が『生きたい』って言うようになれば、俺の耳のクラーケンもいなくなるし」
A「なるほど…!」
B「だから、ほら。せーの、『生きたい』」
A「『生きたい』!」
B「『生きたい』!!」
A「『生きたい』!!!…いや、うん、ますます死にたくなった」
B「ほんと、救いようがないなお前…」
A「知ってる。だからさ」

A「あーあ、死にたいなあ…」

END