がんばる君へ
登場人物
A ♂♀: いろいろがんばってる学生
B ♂♀: Aががんばりすぎなので、休ませようとする存在
やる前の注意とか
男の前提で書いてありますが、口調変えて性別変更も大丈夫です!
台本
B: 君は、何がしたい?
A: 僕は、資格の勉強をして、卒論の準備をして、インターンにも行きたい
B: そうなんだ
じゃあ、なんでそんなに毎日苦しんでるの?
A: わからない
きっと、暇があるからだよ
考える時間すらなくなるほど忙しい毎日にすれば、悩むこともなくなるよ
B: 本当に?
A: ああ、本当さ
成功するためには、学生のうちから頑張らないと
でも、まだ努力が足りないんだ
もっと…もっと頑張らないと
B: 夏休みなんだし、遊べばいいんじゃないの?
A: そうはいかないよ
周りの学生はがんばってるのに、僕だけ何もしないわけにはいかないさ
B: そっか
まあ、もう日も暮れてきたし、酒でも飲みなよ
A: だめだよ
僕が薬をのんでるのは知ってるだろう
精神薬とアルコールの同時に摂取すべきじゃないんだ
B: 君っていつもそうだよね
A: どういうこと?
B: 勉強をすべき、インターンに行くべき、家のことだって、食器を洗うべきだとか洗濯をすべき…
いつも君は「すべき」という言葉に縛られてる
A: 確かにそうかもしれない
でも、それは仕方がないよ
やることが、いっぱいあるんだ
B: 一体、その「すべき」なことは、何のためにやってるの?
A: 社会で成功するためだよ
いや、もう僕は成功はできないだろうから、社会から落ちこぼれないため
B: 落ちこぼれるのはそう簡単にはないからいいとして
その成功とやらは、君の心を殺してまで、掴まなきゃいけないもの?
A: …知らない
そんなこと、考えるだけ無駄だよ
ただ目の前にあることを、やるだけさ
B: だから、考えることを一度やめてみなよ
その一日中動いてる頭の中の歯車を、いったん止めてみたら?
A: 止まらないんだよ!
いつも、あれもしなきゃ、これもしなきゃ、どれもこれもやってない、まだ足りない、って!
頭が、ぐるぐるして、ずうっとぐるぐるして、止まらないんだ!
このせいで読書もろくにできないし、夜だって体が疲れ果てるまで、眠れないんだ!
B: だから、ほら、飲めよ
いいじゃん、君は今日いちにちがんばったよ
今夜はもう、休んでいいんだよ
……はい、君の好きなアイスジンだよ
A: …いらない
B: 頑固だなあ
じゃあ、こうしよう
君は今、休むべきだ
僕が出てくるくらいに参ってる
だから、今夜休まないと、明日以降の進捗に影響が出るよ?
A: ……
わかった、飲むよ
**
A: はあ、なんだか頭が落ち着いてきたよ
ぐるぐるが、ゆっくりになった
B: そうそう、それでいいんだ
ほら、2杯目だよ
A: …ふう……
こんなに、音楽をちゃんと聴いたのは、いつぶりだろう
まるで、音が体に染み込んでくるみたいだ
B: 気持ちいいだろう?
音楽って、本来はそういうもんだよ
作業に集中するためのノイズなんかじゃあないんだ
A: ああ、頭が…楽になる…
なんだろう、こう…
今まで頭を圧迫していたものがなくなって…
思考に…羽が生えたみたいだ…
心地良いな…
B: それが、心の本来の姿だよ
A: なんだか、ぼうっとしてるけど…
すごく…落ち着くなあ…
椅子に、体が沈み込んていく…
B: さあ、君は、何がしたい?
A: 僕は…
僕は、たぶん、何もしたくない
B: ほうほう
A: そうだ、僕は何もしたくないんだ!
勉強も、インターンも別にやりたくない…
ただ、漫然と、休みを自堕落に過ごしたい!
好きな時間に起きて、気が向いたときに散歩して、帰ったら少し昼寝をしたりしたい…
B: うんうん
A: 僕は、疲れた
だから、休みを休みらしく、自由気ままに過ごしたいんだ
B: そうだ、それが君の本当の「やりたいこと」だ
A: 僕は…別に
何もしたくないんだ
B: そういうことだよ
君みたいに、「すべきこと」にがんじがらめになっていると、いつしか本当に自分のやりたいことがわからなくなってくるんだ
だから、たまにはちゃんと、本当の意味で休んだほうがいい
それで心を自由にして、心が何を叫んでいるのか、耳を傾けるんだ
そうしないと…
君が壊れてしまうから
A: 僕は…なに…も……(寝息)
B: …おやすみ
君が、僕の声を聞けないときがきたら、また会おう
END